派遣で働くなら知っておきたい!派遣の3年ルールとは?


30代の私の母親世代(60代)にしてみれば、彼女らが若い頃は正社員で働く(雇われる)ということが当たり前だったそう。
誰でもどこでも就職できるわけではないけれど、どこかしらには皆ちゃんと正社員で働く場所があったのだそうです。

ところが、昨今では正社員ではなく契約社員や派遣社員などの非正規雇労働者として働く働き方が増えています。

それは何も、本人たちが望んで「正社員よりも契約社員や派遣社員として働きたい!」という訳ではなく、正社員として働くけるのであればもちろん正社員として雇用されたいけれど、なかなかそのチャンスに恵まれずやむを得ず非正規雇用という形でしか雇用してもらえないという人たちがほとんどです。

本人の能力やスキルに関係なく、どんなに優秀な人材であってもタイミングによっては正社員になれません。
アルバイトやパートタイムという働き方よりは派遣社員や契約社員の方が安定しているように聞こえますが、派遣社員も契約社員も、会社に雇用契約を更新されなければ次年度の生活は保障されません。

私も契約社員で働いたことがあり最初は使用期間が明けたら正社員という話だったのですが、その頃から会社の業績が悪化し始め私の正社員の話はなんだかんだと理由を付けられ流れてしまい、契約社員のまま3年半が過ぎました。
結局私はどうしても「正社員」として少しでも安定した生活がほしかった為、契約社員の会社を辞め、別業界で正社員になりました。

また、私の高校の同級生は地元の短大を卒業後保険会社で数年間正社員をしたあと(完全歩合制で毎月手取りが10万円を切っていたそうです)派遣会社に登録し派遣社員として3年工場に勤務しました。

ただ、先ほども言いましたが派遣にしろ契約社員にしろ更新されないことにはそれ以上その会社に在籍することができず、別の就職先(派遣先)を見つけなければ失業してしまい生活ができなくなってしまいます。

ここでは派遣社員について色々と掘り下げていきたいと思いますが(契約社員についてはまた機会があればいつか!)、派遣社員で働くと言っても色々なルールがあったりメリット、デメリットがあるのです。
これから派遣で働いてみようという人や現在派遣社員をしているという人は是非参考にしてみてください。

派遣の3年ルールとは

実は、派遣には通称「3年ルール」というものが存在するのですが、何のことだかわかりますか?
「3年ルール」とは、「派遣社員は同じ派遣先(会社)で3年以上勤務してはならない」という決まりのことです。

つまり派遣社員は3年を超えて同一勤務先に勤務することができないため、3年以上その企業に勤めようとする場合は、

  1. 派遣先の企業から派遣会社を通さず直接雇用してもらう
    (正社員や契約社員への登録など、直接派遣先の会社と労働者との間で雇用契約を結ぶ)
  2. 別の派遣先に派遣してもらう(職場を変える)
  3. 派遣元(派遣会社)で無期雇用をしてもらう(正社員など)

などの道しかありません。

派遣先の会社に3年近くも務めたのであれば、もうその会社で必要なスキルや知識はしっかり身についているはずですから、そのままそこで正社員になるというのが一番良いですよね。

しかし、派遣社員から正社員への道は決して簡単なものではありません。
冒頭でも触れた私の高校の同級生の話ですが、彼女も派遣社員として工場で3年勤務し正社員を目指していましたが、結局正社員にはなれず契約満了とともに辞めることとなりました。

彼女曰く、もちろん正社員への登録がないわけではないし実際に派遣から正社員になった人もいたが、誰か正社員の人が辞めるなどして空きが無ければそのチャンスすら回ってこないし、正社員になるための試験のようなものがありそれを突破するのはとても難しい、とのことでした。

もちろん正社員になれるかどうかはその会社の方針やその派遣社員の能力そのものに大きく左右されるものでしょうが、3年派遣として勤務したからといって誰でも簡単に正社員になれるわけではない、というのが現実です。

また派遣社員の3年ルールと似たようなものに「5年ルール」というものがあります。
これはいわゆる「無期転換ルール」というもので、派遣社員、契約社員などの非正規雇用労働者すべてにあてはまり(実質的には5年という設定から直接会社と雇用契約を結んでいる契約社員にあてはまる)「同じ職場で5年間非正規雇用者として働いた場合、次回契約更新時に無期限雇用の権利が自動的に与えられる」というものです。

しかも、労働者側から無期雇用の申請があった場合、使用者(会社)はそれを拒否することができません。
私も契約社員の会社でもう少し粘っていたら無期雇用の申請ができて正社員になれたのかも?
いえいえ、必ず正社員になれるとは限りません。

もしかしたら5年を超える前に「来年は契約更新しません」と会社から切られていたかもわかりません。
実際には5年を超過する直前に「次回の契約はしません」と雇止めになるケースも多く、また契約期間が半年空けば勤続年数がそこで一度リセットされる為に意図的に半年間の期間を開けて次回の契約にもっていく、というようなちょっと悪質な企業も存在します。

3年ルールの目的

そもそもなぜ3年ルールというものが生まれたのでしょうか?

派遣の3年ルールが施行されたのはわりと最近で、2015年の9月30日です。
元々3年ルールが設定された目的には「安定した雇用を生み出すこと」です。

ところが、この3年ルールの施行は派遣法の法改正というよりも「法改悪」と言ったほうがなんだかしっくりきます。

というのも、先ほどの3年ルールや5年ルールのところで少し触れたように、法律で同一勤務先への派遣は3年を超えてはならないと決まってしまった為、政府のもくろみ(派遣社員が勤続年数3年を超える時を転機に正社員としての雇用を生み出そうとするもの)とは裏腹に企業側は派遣社員に無期転換ルールを申請されることを恐れ3年の契約満了を目の前に派遣社員を雇止めするいわゆる「派遣切り」をするようになってしまいました。

この3年ルールが施行されたことで運良く派遣社員から正社員として直接雇用された人はおそらくごく一握り。
他の大多数の派遣社員は契約満期を直前に派遣切り、というパターンが多いというのが現実のようです。

3年ルールの抜け道

さて、さきほど3年ルールとは同じ勤務先で3年以上派遣社員として働けない、3年以上働く場合は派遣先の会社に正社員や契約社員などの形で直接雇用契約を結んで雇ってもらうなどの対策をしなければならない、ということをお話ししましたが、実は3年ルールの抜け道というものが存在します。

実は3年ルールをもっと詳しく解説すると「同じ勤務先の同じ部署では3年以上派遣社員としては勤務できない」のです。
わかりましたか?

つまり、「部署を移動してしまえば同じ会社にさらに3年派遣社員として勤務することができる!」ということなのです。
確かに派遣先(実際に派遣社員として働いている会社)だってもしあなたが優秀な派遣社員だった場合は3年ルールがあるからといってそんなに簡単には手放したくない、というのが本音でしょう。

ただ、よく考えてみてください。
優秀な人材ならいつまでも派遣会社を通して雇うよりも直接雇用して正社員としてずっと手元に置いておきたいと思うのが会社です。

それに、部署を移動してさらに3年派遣社員で…というよりも、できるなら正社員にしてもらう方が働く側としても生活が安定しますよね。
(また次の3年目が来る時「また別の会社で一から仕事を覚えなければならないのかしら?」なんて要らない心配をしたくないですよね。)

確かに部署を変えてしまえば同じ会社にさらに3年派遣社員として勤務し続けることはできます。
ただ「安定性」から見ると、いつまでも派遣社員でいるよりも正社員で直接雇ってもらう方がいいよ、ということです。

3年ルールが例外となるケース

ここまで3年ルールの概要、そして3年ルールの抜け道について解説してきましたが、じゃあ誰にでも3年ルールがあてはまるのか?といえばそうではありません。

主に以下の場合は、この3年ルールの適用外となります。

  • 60歳以上の派遣社員
  • 産休(産前、産後)や育児休業や介護休業などで休んでいる人の穴埋めとして在籍する場合
  • 派遣元(派遣会社)に無期雇用されている
  • あらかじめ終日が決定しているプロジェクトへの派遣の場合
  • 日数限定業務の場合
    (1カ月のうち派遣先の社員の出勤日数の半分以下かつ10日以下しか出勤しない場合)

まとめ

それまでは正社員として雇用されるチャンスに恵まれなかった人にとっては、アルバイトやパートとして働くよりも派遣会社に登録して派遣社員として働いた方がなんとなく安定したイメージですし、実際に派遣社員の人は直接会社と雇用契約を結ぶ契約社員の人などよりも給料が高い、というような場合も存在します。

ところが、「3年ルール」の施行で同一派遣先で働ける年数に上限が設けられ、3年を超えて働く場合は雇用先で直接正社員や契約社員にしてもらうか、派遣会社に無期雇用してもらうか、もしくは部署を変えて同じ派遣先にさらに3年派遣社員として勤めるか、などしか方法がありません。

3年ルールの施行のために実際には契約満了とともに派遣切りにあう人も大勢います。
テレビではここ数年景気も良くなっているとはいいますが、本当にそうでしょうか。

少しでも多くの人が一日も早く安定した雇用を手に入れられますように。



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