いつまで続くマイナス金利!?投資・生活への影響をわかりやすく解説2019

マイナス金利が日本で初めて導入されたのは2016年2月のことです。
その結果、私たちが金融機関に預ける金利は限りなくゼロ金利になり、預金をする意味がないほど金利は低下し、今も継続しています。

導入から約2年を経過した今、あらためて

  • マイナス金利の意味
  • マイナス金利が導入された目的
  • マイナス金利は今後もさらに継続するのか
  • マイナス金利は今よりも拡大する可能性があるのか

そして、投資や生活に与える影響、マイナス金利時代を賢く生き抜くノウハウについて考えてみたいと思います。




マイナス金利とはどういうことなの?

2年が経過した今、マイナス金利の意味はよく知られていますが再確認しておきましょう。

マイナス金利とは、預金に対する金利がマイナスになることです。
ただし、マイナス金利は、私たちが金融機関に預金をするときの金利ではありません。
マイナス金利になったのは、金融機関が日本銀行に預金する金額の一部で、全額ではないのです。

マイナス金利導入で、今まで年0.1%の金利がついていたのが、2016年2月16日からマイナス0.1%と0.2%引き下げられました。
この結果、私たちが金融機関に預金するときの普通預金の金利は、当時0.02%でしたが大幅に引き下げられて0.001%とほぼゼロ金利になってしまったのです。

マイナス金利導入の目的

マイナス金利導入以前にも、日本銀行はデフレ脱却・景気回復のために「量的・質的金融緩和」あるいは「異次元緩和」と呼ばれた金融緩和政策を実施してきました。
しかし、日本銀行や政府が期待したとおりに景気回復が進まないことから、これをもっと強力に推進するためにマイナス金利政策が実施されたのです。

最終的な目標はデフレ脱却・景気回復ですが、マイナス金利導入の大きな目的は以下の2点です。

  1. 金融機関が日本銀行への預金を少なくして企業や個人への融資を増やすこと
  2. マイナス金利によって金利が低下し、企業や個人が預金をしないでお金を使うこと

日本銀行は、マイナス金利導入で金融機関が日本銀行に預金すると損をするため、そのお金を企業や個人へ融資し、そのお金が消費されて経済が活性化することを期待しました。

また、マイナス金利の導入で今までよりも一層金利が低下します。
これにより企業や個人が預金をしても利息がつかないこと、およびローンを借りても金利が低いので高額な商品も購入しやすくなることから消費が促されて多くのお金が使われることを期待しました。

なぜ一般的には考えられないマイナス金利を導入したの?

他人の大切なお金や物を借りたり、預かったりすれば利息やお礼をするのが一般的な常識です。
なぜ日本銀行は、一見すると非常識と思えるマイナス金利を導入したのでしょうか。

日本銀行は、デフレ対策のためのマイナス金利を導入する前には、金融機関から国債を買い取って金融機関が自由に貸し出せる資金を増やし、市場に出回らせて経済の活性化を図る、量的緩和政策を実行しました。

また、日本銀行が金融機関から買い取る資産の対象を超長期国債やETFなどにまで広げて買い入れて同様の効果を狙う質的緩和の両方を行ってきましたが、デフレ対策に期待した効果は得られず、デフレ脱却にはさらなる対策が求められていたのです。

しかし、2008年のリーマンショック後に日本はゼロ金利政策と取っていたため、これ以上は金利を動かせない状況でした。
そこで日本銀行の黒田総裁が放ったのが金利の常識を破ったマイナス金利です。

金融機関が日本銀行に預金する理由

ところで金融機関は、なぜ日本銀行に預金するのでしょうか?

その理由は、金融政策や金融機関同士の決済手段などのために1957年に施行された「準備預金制度に関する法律」によって、金融機関は保有する預金の一定割合以上を日本銀行に預けることを義務づけられているからです。

この一定の割合のことは「準備率」と言い、準備率に従って預け入れなければならない最低金額は「法定準備預金額(または所要準備額)」と言います。
準備率は、固定ではなく日本銀行が金融政策のために設定・変更・廃止を行いますが、現在はそれによる金融政策効果が薄れたことから1991年以来2018年1月現在まで変更されていません。

現在の準備率は、預金種別や預金額などによって異なり、0.05%~1.3%まで幅があります。
なお、準備預金制度の対象となる金融機関は、各種銀行、預金残高1,600億円超の信用金庫、農林中央金庫です。

また、2008年9月のリーマンショック後、日本銀行は法律で必ず預金しなければならない金額(法定準備預金額)をこえた金額(超過準備額)を金融機関が預金すると、それに対して0.1%の金利をつけました。
0.1%の金利は決して高くありませんが、ばくだいな預金量のある金融機関にとっては貸倒れリスクがなく確実に利息が得られる魅力があります。
そのため当時の預金残高で法定準備預金額が約9兆円に対して、それをこえて預けられている超過準備額は約220兆円にも達しています。

マイナス金利が適用される預金とは

マイナス金利とは「預金に対する金利がマイナスになること」で、適用されるのは「金融機関が日本銀行に預金する金額の一部で新規に預金する金額」です。
マイナス金利が適用される預金についてもう少し詳しく確認します。

マイナス金利と聞くと、預金残高のすべてがマイナス金利になると思いますが、実際は一部の預金残高がマイナス金利になるだけです。

マイナス金利が適用されるのは、法定準備預金額をこえる金額で、かつ2016年2月16日以降に金融機関が新たに預金する金額に対してのみ適用されます。
マイナス金利になる前までの預金は対象外のため、マイナス金利導入後の2016年6月時点でマイナス金利が適用される金額は約20兆円と預金残高全体の約10%です。

マイナス金利導入は成功?それとも失敗?

マイナス金利導入後、約2年を経過した今、マイナス金利政策は成功と言えるのでしょうか?
マイナス金利だけの効果だけではありませんが、内閣府は2017年1月と9月にアベノミクス全体として多くの成果を発表していますが、そのなかから一部を以下に紹介します。

GDP(国内総生産)

  • 名目GDP(年率) 50兆円増(10.1%増)、実質GDP(年率) 31兆円増(6.3%増)
  • 名目GDPは過去最高、実質GDPは約11年ぶりの6四半期連続のプラス成長(比較は2012年10-12月期対2017年4-6月期)

企業収益(経常利益)

  • 48.5兆円(2012年度)から75.0兆円(2016年度)と26.5兆円増(54.7%増)
  • 75.0兆円は過去最高

倒産件数

  • 11,719件(2012年度)から8,381件(2016年度)と3,338件減(28.5%減)
  • 2016年度は26年ぶりの低水準

就業者数

  • 6,271万人(2012年)から6,456万人(2016年)と185万人増(3.0%増)
  • 生産年齢人口が390万人減少する中での増加、正規雇用者数も8年ぶりに増加

失業率

  • 4.3%(2012年12月)から2.%(2017年7月)と1.5%低下
  • 2.8%は1994年6月以来、約23年ぶりの低水準

所得

  • 春闘の賃上げ率1.72%(2012年度)から1.98%(2017年度)と0.26%上昇
  • 約2%と今世紀に入って最も高い水準の賃上げが4年連続で実現

その他、内閣府の報告には含まれていませんが株価も以下のように上昇しています。

株価

2012年1月末日の8,802.51円から201712月末日の22,764.94円と13,962.43円上昇

以上のような指標やその他の指標も景気の上向きを示していますが、当初デフレ脱却のために目指した「2年で2%の物価上昇」は5年を経過しても達成されていません。
人手不足で店舗閉鎖もあるなか、給与の上昇はそれに追いついていません。
むしろ物価の上昇で相殺されて、アベノミクスの恩恵を多くの国民が十分に受けられていない状況です。

株高による恩恵は一部の富裕層に限られています。
そのため、私たちが将来の生活に夢と希望が持てるような状況に至ってはおらず、その意味では、マイナス金利は失敗とも言えませんが成功とも言えない中途半端、あるいは目標達成までの途中段階です。

マイナス金利が投資運用・生活に与える影響

未だアベノミクスが成功したとは言えない状況で、マイナス金利政策は私たちの生活にどのような影響を与えていくのでしょうか?

一般的にはすでに影響が出ていますが、以下の可能性が考えられます。
なお、以下の可能性には、すでに起こっていること、起こる確率の高いこと、起こるかどうか不明なことが含まれています。

  1. 高額商品(住宅・自動車など)マーケットの活性化
  2. 株式などの配当利回りが相対的に上昇(預貯金から投資への比率アップ)
  3. 企業の国内設備投資の活性化
  4. 円安の進展・過度の円高ドル安の抑制
  5. 金融機関の収益が悪化(口座手数料の徴収、小規模金融機関の再編進展)
  6. 公社債・保険などの金融商品の利回り低下・保険料値上げ・運用難・運用停止
  7. 金融機関の日本銀行への預金だけでなく私たちの預金もマイナス金利
  8. 金融機関の金利以外でのサービス強化(ポイント付与、買い物割引など)
  9. 地方自治体の住民サービスレベルの低下
  10. 低金利による賃貸物件増と少子化の進展で賃貸バブル崩壊

さて、投資の面では考慮しなければならないのは、マイナス金利が継続して仮に日本銀行・政府が目指す物価上率2%(現在の見通し平均値は0.6%から0.9%以下)へ緩やかに進んだとき、預金中心の資産運用では確実に資産がマイナスになることです。

仮に2%の場合、10年で例えば資産1,000万円は10年で約800万円に価値が目減りします。
収入のアップが現状であまり見込めないことから資産は確実に減少するでしょう。

欧米の資産運用では現金・預貯金の比率は約15%から35%に対し、日本は約55%です。
この原因として考えられているのは、欧米人がリスクを好むからではなく資産運用に関わるリテラシー(能力)を小さい頃から養っているからと考えられています。

一発を狙う投資ではなく、リスク分散を図った賢い資産運用ができる能力を養っていくいくことが、マイナス金利時代には必要です。

●参考:外貨積立のメリット・デメリット

マイナス金利はいつまで続くのか?

マイナス金利や質的・量的緩和は、デフレ脱却ができていないかぎり継続される可能性は高いと言ってよいでしょう。
日本より先に、マイナス金利を導入したヨーロッパ各国やユーロ圏中央銀行も、マイナス金利を継続しており長期化しています。

では、マイナス金利はさらに大きくなるのでしょうか?
これに関しては、以下の理由から否定的な意見が多く述べられています。

  • 日本銀行内部にマイナス金利の導入に反対意見もあること
  • 円安が進行するためアメリカから反発があること
  • マイナス金利導入で期待した法人向け設備資金の貸し出しはほぼ横ばいで増加していないこと

ただ、日本に先んじてマイナス金利を導入したヨーロッパでは、事情がまったく同じではないものの、欧州中央銀行(ECB:ヨーロッパユーロ圏の金融政策を担う中央銀行)はマイナス0.1%から初めてマイナス0.4%に拡大。
他にマイナス金利を導入しているスイス、スウェーデン、デンマークもマイナス0.5%から0.75%であるため、まったく可能性がないとは言えません。

まとめ

日本にマイナス金利が導入されてから約2年、マイナス金利の意味やその影響について考えてみました。
まだ、しばらくマイナス金利政策は続くと予測されることから預貯金中心の資産運用から徐々に株式やリスクが多少高い運用方法へ移行していくことを考えないと資産がどんどん目減りして行く可能性があります。

リスクを抑えて年5%程度が期待できる投資や税制優遇のある預貯金制度の利用、あるいはリスク分散を図った投資のウェイトを高めるなどの工夫をすることが今後より強く必要になっていきます。

 

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