奨学金を返せないのは甘えではない!パターン別 3つの対策法&知っておきたい相談窓口
「奨学金は全部自分で背負うモノ・自己責任。」
「だから全部1人でなんとかしなきゃ」
そんな考えは今すぐ捨てましょう!
彩春館学園、マネー研究部(仮)部長の芹沢です。
そういった考えに縛られて「奨学金が返せないなんて、誰にも相談できない、恥ずかしいことだ」と感じている方はきっと多いハズです。
ですが1人ですべてを抱え頑張った結果、得られるはずだった救済処置を逃してしまうなんてことになりかねません。
あまり知られていないのですが、奨学金の支払い期日を伸ばす、減額してもらうなどの手もあるんです。
ここでは「返済する意志はあるものの」奨学金が返せない方にむけて、奨学金が返せないパターン別に今後の対策とその手順を紹介していきます。
この記事に書いてあること
奨学金を返せないのは甘え・バカではない
知恵袋や2chを覗いてみると
「奨学金を返せないのは甘え」
「毎月少しずつであれば返済できるだろうに、それすらできないなんてバカだ」
「奨学金を返せないなんて、計画性がない」
だとか、散々な言われようです。
ですが本当に、甘えやバカという言葉で片づけられることなのでしょうか?
奨学金を返せなくなってしまった方の話を伺うと、
- 突然の事故で収入がなくなってしまう
- 会社の給料が上がらず生活するだけで手いっぱいになる
- 両親の世話のため働く意志があっても働けなくなる
- 保証人になった負債を抱えてしまい自分の生活がなり行かなくなる
など、本人の意志ではどうしようもない理由で奨学金を返済できなくなった例が多いんです。
あえて返済しない(返済をすっかり忘れていた)という方もいるようですが、そのような例はわずかです。
『奨学金を返せない=バカ・甘え』
とばかりは言えない状況になっているんですね。
だから今一度言います!
奨学金を返せないからと卑屈になったりご自身を責め、1人で抱えこんだりするのはやめましょう。
奨学金を返せない若者が増えている理由とは?
日本学生支援機構(JASSO)が平成27年度末に行った調査では、奨学金を延滞している人は327,512人とのことです。
参考記事:平成27年度 奨学金の返還者に関する属性調査結果の公表について
奨学金を返せない若者が増える背景を探ってみると、日本の社会制度そのものが関わっていることが分かってきました。
家庭全体の給与が上がらない
国税庁が発表している民間給与実態統計調査によると、「1年を通じて勤務した給与所得者※の1人当たりの平均給与は 422万円」。
ピーク時の1997年の467万円に比べると45万円のマイナスになっています。
昔と違い今はボーナスを貰えればよい方で、ボーナスが雀の涙ほどという方も少なくありません。
ボーナス支給の減額が給与所得平均額を押し下げる原因の1つとなっているようです。
こうした理由から家庭全体の収入が下がり、親からの仕送り額は過去最低となっています。
そのため2人に1人が、奨学金に頼らざるを得ない状況になっているんです。
※正社員・派遣社員・アルバイト・パートなども含めた数字
非正規雇用が増えている
正社員の給与がアップしない理由として、非正規社員雇用の増大が考えられます。
1994年には20.3%だった非正規の割合は、2017年には37.3%に。
5人に2人ほど非正規という時代になっています。
一方でバイトの最低賃金は上昇していて、東京都内であれば時給1,000円~1,200円が一般的です。
1人暮らしのコストが増加傾向
奨学金が返せなくなってしまった方の例をみると、そのほとんどが1 )在学中から1人暮らし、または2)社会人になってから1人暮らし、または3)1・2の両方パターンです。
社会人になってから1人暮らしとなると家賃はもちろん、必要最低限の家具などの初期費用が大きくのしかかります。
ここに生活費などを加えると、月2万円~3万円の返済でも厳しいものがありますよね。
学生時代から1人暮らしの方の場合、仕送りをしてもらっていたとしても学費+生活費で足りない分を奨学金で埋める必要があり、卒業後に何百万もの奨学金という名の借金を抱えかねません。
いっぽう、学生時代から卒業後も実家暮らしであればどうでしょうか。
頑張って100時間アルバイトし月に10万円の稼ぎがあるとして、月々3万円を奨学金返済に充てても実家に入れるお金、自分の小遣いも十分に手元に残ります。
1人暮らしのコストが高いこと、正社員になっても給与が上がらないことなどを考えると、1人暮らしの方の奨学金返済はとても厳しい状況と言わざるを得ないのです。
必ず把握したい!奨学金を返せない場合のリスク5つ
奨学金の内容をどれくらい理解しているのか、理解度の調査(中央労福協による調査)では、次のような結果が報告されています。
- [返還の期限を猶予する制度がある](38.6%)
- [自宅等へ電話等の督促が行われる](27.5%)
- [3 ヵ月以上の延滞はブラックリスト](23.5%)
- [延滞は年 5%の延滞金が賦課される](22.3%)
- [教員の返済免除制度は廃止された](16.0%)
奨学金の内容を知らずに受け取っている方が多いことが伺えます。
「なんとかなる」、「後で払えば大丈夫」という考えはとても危険です!
奨学金が返済できないと、どのようなリスクが待ち構えているのか、今一度おさらいしてみましょう。
年2.5%~5%の延滞金が発生する
クレジットカードの支払を滞納してしまった場合、延滞金が発生するのと同じように、奨学金でも返済期日をすぎると延滞金が発生します。
奨学金の種類(第1種・第2種)によって違いますが延滞金の率は2.5~5%です。
1回だけの返済遅れであれば延滞金は発生しませんが、2回返済が遅れると延滞金が発生し、自宅だけでなく会社(自宅に繋がらなかった場合)や保証人にも連絡が入ります。
ブラックリストに登録される
3ヶ月以上延滞を続けていると個人信用情報機関に事故情報として登録されます。
ブラックリスト入りすると、返済完了後も5年間は登録情報が生きるため、クレジットカードの発行や、家・車のローンなどが組めなくなるんです。
さらに返済期日が来ていない残りの奨学金と、延滞金を合わせて請求される可能性があり、応じられない場合、連帯保証人に請求が渡ります。
財産や給与の差し押さえ
9ヶ月以上の長期間延滞を続けると、日本学生支援機構の顧問弁護士名義で期限付きの督促状が届きます。
最終的には法的措置(給料や財産、土地などの差し押さえ)の手続きが行われ、裁判所への訴訟費用も請求されることに…。
自分だけでなく保証人の給料や不動産、生命保険などに対しても延滞者と同じ差し押さえが同時に行われることもあるので、保証人に迷惑をかけます。
奨学金を返済できないと訴訟にまで発展する可能性があるんですね。
最悪のケースに至らないためにも、日本学生支援機構では奨学金を返せない人への救済措置を用意しています。
- 今のペースでは支払いが難しい
- 支払う意志はあるけれども一時的な支払いが難しい
- 滞納がしばらく続いている
という方は、次の内容を参考にして最悪の事態を回避しましょう。
タイプ1:一時的に月々の返済額を少なくしたい
減額返還制度の利用
奨学金を借りる時に設定した月々の返済額を一定期間(最大10年間)半分に減らし、その分返済期間を延ばしてもらう制度です。
利息は国庫が負担してくれるためかかりませんが、返済総額は変わりません。
減額返還制度を利用するには、次の条件を満たす必要があります。
1度でも返済に遅れが出てしまうと、申請対象外になってしまうので「支払いが厳しい…」と感じた時点で手続きを進めたいですね。
金融機関からお金を借りる
奨学金の延滞で保証人に迷惑をかけたくない…
そんな時には、金融機関からお金を借りるという選択肢もあります。
審査の早いプロミスなどのカードローンであれば、最短1日以内に必要な分だけのお金を借りて奨学金返済に充てることができます。
ただ金融機関からお金を借りるとなると、利子を足して返済していく必要があるので、利子が膨れ上がることのないようしっかりとした返済プランがあり、返済管理できることが前提となるでしょう。
タイプ2:病気・怪我・経済的な理由などで支払えない…支払期限の猶予が欲しい
災害、傷病、経済困難、失業などの理由から奨学金の返済がむずかしく、返済期限を延ばせば返済可能な方に向くのが「返還期限猶予制度」です。
最大で10年間、返済期日を引き延ばしてもらえます。
この方法を活用すれば、支払い期限を過ぎたからといって支払いの催促をされることや、ブラックリストに載ることもありません。
また伸ばした期間分の、利子は発生しません。
返還期限猶予を利用するには、次の条件を満たす必要があります。
この場合も同様に1度でも延滞があると対象外になってしまうため、余裕を持って申請手続きを進めていきましょう。
タイプ3:どう考えても奨学金返済は不可能
上記でご紹介した制度を活用しても奨学金の返済がむずかしい場合、弁護士や司法書士に相談をした上で、債務整理という選択もあります。
債務処理を行うことで将来利息のカット、払いすぎた利息の返還、借金減額などが受けられます。
ここでは債務整理の種類とその特徴を見て行きましょう。
任意整理
弁護士や司法書士に返済方法や返済額について、支払可能な条件になるよう交渉してもらう方法です。
奨学金はもともと金利が低く長期の分割のため任意整理をしてもさほど意味がありません。
そのため奨学金は対象外にして、他の金融機関からの借金(カードローンなど)の借金の支払い交渉をする方がほとんどです。
奨学金以外の債務を整理することで、その分を奨学金支払いに充てられる余力のある方や、保証人に奨学金返済の肩代わりという迷惑をかけたくない方に向く方法です。
特定調停
返済方法や返済額について、今後の条件を話し合う方法です。
ただ日本学生支援機構は、特定調停には応じない姿勢なので、特定調停はほとんど意味がありません。
個人再生
将来の収入が見込め返済の継続が可能な場合、裁判所に申し立てて債務(借金)を大幅に免責してもらい、長期の分割払いにしてもらう方法です。
本人(あなた)の支払いは個人再生の対象となり、借金は最大80%まで圧縮されますが、免責された分の金額は保証人が負担することとなります。
自己破産
「支払い不能」と裁判所に判断された場合にのみ自己破産できます。
本人(あなた)の借金は奨学金も含めて0になりますが、保証人を立てていた場合、あなたの代わりに保証人が借金を負担することになるんです。
このように債務整理には幾つかの方法があります。
保証人との関係や、債務金額、現在の支払い可能状況などによって、ベストな選択は人それぞれです。
信頼のおける弁護士・司法書士に相談をして、最善の方法を探ることが大切です。
奨学金返済に困ったらまずは相談窓口へ!
日本学生支援機構では奨学金の返済で困っている方専用の相談センターを設けています。
現在の支払い状況やあなたの状況を見て、適切なアドバイスをしてくれることでしょう。
支払い期日を過ぎてからだと、利息も付き返済が不利になってしまうため、早めの相談を心掛けてください。
・奨学金返還相談センター
0570‐666‐301(ナビダイヤル)
まとめ
奨学金の返済が大幅に遅れてしまうと、保証人に請求が渡るだけでなく、ご自身の情報がブラックリストに登録されたり、裁判沙汰になり差し押さえが強行されたりする可能性もあります。
奨学金の月々の支払減額や支払い期日を延ばしてもらえば何とかなるという方は、手遅れ(延滞発生)になる前に各種制度について「奨学金返還相談センター」まで問い合わせてみてください。
延滞が生じていて、支払いが立ち行かなくなっているのであれば奨学金関連に強い弁護士や司法書士に相談をして債務整理の可能性を探ってみるのがいいでしょう。
最後に今一度強調しますね。
「奨学金は自分で借りたものだから」
「自分で何とかしなきゃ、これは自分1人の問題だ」
と抱え込んでしまう方が多いですが、それは違います。
ご紹介したように、日本社会の今の状況が奨学金を返せないで悩む方を増やしているんです。
だからあなただけの責任ではありませんし、1人で背負うべき問題でもありません。
相談窓口や、弁護士・司法書士、できれば家族にも相談をし、ベストな打開策・対策案の可能性を自ら狭めないことが大切です。
本記事の内容が奨学金返済に悩める方にとって、今後のヒントになったならば幸いです。