過去のITバブルの教訓を生かし2019年以降の仮想通貨を含む相場を読み解く
「バブル崩壊の条件が整いつつあるのでは」という記事を、経済関連の専門誌や新聞社が相次いで発表しています。
- 東洋経済オンラインの「2018年以降、世界同時不況が始まる理由」
- 日本経済新聞の「満たされつつあるバブルの条件」
- 毎日新聞出版の「危ない世界バブル」
- 週刊ダイヤモンドの「バブル相場の勝ち抜け方」
などの記事です。
特に、現在は仮想通貨、AI(人工知能)、VR・AR(仮想現実・拡張現実)、ビッグデータ、ロボットなどIT業界の話題が多く過去に起きたITバブルが再来するのではないかといわれています。
はたして現在の状況は、バブル経済の状態でしょうか?
バブルがはじける可能性はどの程度あるのか、はじけるとしたらいつになるのでしょうか?
バブル崩壊に関する知識がないと、株や債権、仮想通貨などへの投資で高値つかみをしてしまい、損をする可能性があります。
損をしないためには、バブルに関する基礎知識と過去のバブル崩壊のメカニズムを知ることが重要です。
気になる2018年以降の景気の動向も加えて解説します。
この記事に書いてあること
バブルは具体的にどういう状態?バブル発生と崩壊のメカニズム
「バブルとはどういう経済状態のことでしょうか?」
「バブルはなぜ発生し、必ず崩壊するのでしょうか?」
バブルの規模は別にしてバブルは10年おきに起きるといわれています。
バブルで損をしないで利益をあげるには、バブルの発生と崩壊のメカニズムについて知ることが重要です。
バブルと好景気の違い
バブルも好景気も、どちらも経済の状態が上向いている状態のように思えますが、両者には決定的な違いがあります。
まず、好景気とは、実体経済の良い状態が継続しているときのことです。
一方バブルとは、土地や建物、その他が実体経済とは違う要因で急騰し、実体経済からかけ離れた状態が継続しているときのことです。
具体的には、バブルになると土地や建物の広さ・仕様が変わらないのに価格だけがバブル前の2倍、3倍に上昇します。
また、企業の経営状態・資産内容は変わらないのに株価が同様にバブル前の2倍、3倍となっていきます。
このように景気が過熱して実体経済とかけ離れた状態がバブルです。
好景気のときは、長期的に不動産や株式などの値上がりが見込まれるので資産や資本に「投資」を多くの人が行います。
しかし、バブル期には資産や資本の内容とは関係なく、今購入すればもうかるという「チャンス」に対して多くの人が「投機」を始めます。
投資の「資」は資本ですが、投機の「機」は機会=チャンスの意味です。
「投機」は宝くじのようなもので当たれば大きいですが、当たる人は少なく多くの人が損をします。
「投資」のつもりが「投機」にならないようにするにはバブルに関する知識を持つことが必要です。
バブル発生と崩壊の仕組み
バブル発生の仕組み
バブル発生の仕組みを単純化すると次のとおりです。
1.魅力的な投資商品の誕生
魅力的な投資対象商品が注目され始めます。
2.投資者の増加と価格の上昇
同じような考え方をする人が増え、投資商品が買われ始めると、市場原理が働き、その投資対象商品の価格が上昇していきます。
3.大きな値上がり益の享受者の誕生が投資を加速
価格が上昇すると初期に投資をした人は大きな値上がり益を得て、そのことでさらに投資対象商品が注目を集めます。
4.投資ではなく投機する人が増加
これを見た人たちが同じように利益を得たいと思う心理や、「今買わないとさらに値上がりして買えなくなるかもしれない」という心理が生まれ、より多くの人たちが投資を始めます。
すると価格はさらに上昇し、このころから投資ではなく徐々に投機になっていきます。
5.バブルの発生
購入する人が増加するとともに、さらに値上がり状態が継続し、バブルが発生します。
バブル崩壊の仕組み
1.購入者の減少
バブルは泡のことです。
泡は必ずはじけるように、バブルは一定の条件を満たすとはじけて、損をする人や破産する人が多数出てきます。
価格が上昇しても、まだ購入する人が多くいる限りバブルははじけません。
しかし、あまりにも価格が上昇する、あるいはその商品に興味を持った人の大半が投機を経験してしまうと、購入者が減少し始めます。
2.価格の上げ止まり
購入者が少なくなると市場原理が働き、今まで右肩上がりであった価格が上げ止まります。
3.投機からの撤退者の増加と価格低下の始まり
購入者の減少で価格が上げ止まると、投機していた人もそろそろ価格が下がっていく可能性があると思い始め、投資から手を引き、価格が低下し始めます。
4.バブル崩壊
価格低下が始まると、新規の購入者は激減し、投機をしていた人も損をしたくないために、一斉に投機から撤退を始め、価格低下が加速します。
すると撤退者がさらに増加する負の連鎖が生じ、価格下落が一気に加速、その結果バブルがはじけます。
バブルは必ず発生する
経済学者でハーバード大学名誉教授のガルブレイス氏は、「資本主義経済では投機と、その後の暴落は繰り返し起こる傾向があり、バブルの崩壊は資本主義の運動法則の必然的な結果である」と述べています。
それ以外にも「人間に欲望があるかぎりバブルは必ず起きる」と多くの識者が同様のことを述べており、また過去のバブル発生の歴史が証明しています。
バブル崩壊時の怖さを知っていますか?
バブルで資産価値が数年で大きく膨れ上がった後にバブルが崩壊しても、最悪で投資した金額を損するだけと思っていませんか?
例えば自己資金1,000万円で投資をし、バブルでそれが20倍の2億円まで資産価値があがったときに、バブルがはじけて資産価値がゼロになっても1,000万円の損だけで済むように思えます。
しかし、バブルが崩壊すると自己破産に追い込まれる人、そこまでいかなくても大きな負債を抱える人が多数現れるのです。
その理由について説明します。
土地でも株式でもバブルで毎年30%の資産価値の上昇が見込めるとします。
すると5年後には複利で投資をすると資産価値は自己資金の元金は3.7倍に増えます。
しかし、人間には欲があるため利益が確実に見込めるとしたら、多くの人はもっと増やそうと考えるのが一般的です。
それを可能にするのが金融機関からの借入です。
例えば、1,000万円で土地、または株式に投資すると、バブル期ではそれを担保に金融機関から簡単に借入ができます。
購入した資産に対して80%、さらにその80%と担保を次々に設定でき、初年度に約4,600万円以上(=1,000+800+640+512+410+328+262+210+168+134+107…)の投資が可能です。
これを繰り返すことで短期間に数億円まで資産を増やせます。
例えば、4,600万円が2年目には約6,000万円に資産価値が増加、増加後の資産価値の80%まで借入ができ、投資資金を上乗せした投資ができます。
こうして自己資金を使うことなく再投資が可能です。
これにより、数年で資産価値が仮に2億円になった場合、次の投資のために金融機関から80%の借入をし、その直後にバブルが崩壊し資産価値が一気に30%減少したらどうなるでしょうか?
資産価値は1.4億円に減少したにも関わらず金融機関からの借入は1.6億円、この時点で資産を処分しても元金は戻らず、逆に約2,000万円の借金が残るのです。
処分をためらっているうちにさらにバブル崩壊が進むと、1億円以上の借金を抱え自己破産に至る可能性があります。
投資(投機)を自己資金の範囲内で行っていれば被害は最大でも投資した金額内です。
しかし、バブルは社会・経済的な仕組みとして、多くの人を投機に熱狂的に駆り立てる状況ができています。
さらに、簡単に投機資金を借りられる環境が存在するため、多くの人が一瞬に大きな損失を抱え込むリスクがあるのです。
ITバブルとは
今、AI(人工知能)、VR・AR(仮想現実・拡張現実)、ビッグデータ解析、SNS、クラウド利用、IoT機器、ロボットなどや、IT技術なしでは実現が不可能な仮想通貨などIT技術に大きな関心が集まっています。
すでに社会に浸透している技術もありますが、社会や経済を大きく変える可能性がある技術が多く、今後の技術の進展が期待されているのです。
しかし、過去にIT技術への期待から起きたITバブルがありました。
ITバブルがなぜ起きて、どのように崩壊したのかその教訓を知って理解しておくことは、今後の仮想通貨や期待されるIT技術が株価などにどう影響するかを考慮するうえで参考になります。
ITバブルが起きて崩壊した時期
ITバブル(ドットコムバルブ、インターネットバブルともいう)とは、1990年代の後半から2000年代の初めにアメリカでIT関連企業に過剰な人気が高まって投資が集中、その結果、アメリカや日本でIT企業の株価が急騰・急落したことです。
ITバブル前のアメリカのインターネット関連企業などハイテク企業が多く含まれるナスダックの株価指数は、1994年から1996年までは約900ポイントから1,000ポイントでやや微増傾向でした。
1998年10月に1,300ポイントまで上昇した後は急騰し始め、わずか1年半後の2000年3月にはITバブル最高値の5,133ポイントまで上昇、しかしその後急落し、1年半後の2001年9月には1,387ポイントに下落しバブルは崩壊しました。
その後2002年10月まで下がり続け最安値1108ポイントまで低下しバブル前に戻りました。
ITバブルが起きた理由
ITバブルが起きた時代のアメリカでは、自動車や家電などの製造業企業の勢いが衰え、産業構造の転換が急務だと叫ばれ、製造業に代わってIT関連企業がその有力候補として期待されていました。
そこへ、マイクロソフト社がWindows95を搭載したパソコンを1995年に発表したことにより、その使いやすさから大きな反響を呼び世界的に大ヒットしたのです。
その結果、マイクロソフト社の株価は急騰し、創始者のビル・ゲイツ社長は、世界一の大富豪になりました。
これに刺激され、多くの企業が第二、三のマイクロソフトを目指してIT事業に参入するとともに、多くの投資家がIT企業に投資、バブルが始まります。
日本にも波及し、当時の時価総額でIT企業の1つNTTドコモがトップになり、携帯電話事業を始める前のソフトバンクがトヨタ自動車の時価総額をこえるほどIT関連企業の株価は高騰しました。
このITバブルを加速させたのは、この時代は世界的に過剰流動性が高まって金融緩和状態(低金利・金余り)であったことです。
それに加えて、この時期はアジアの通貨危機や世界最大のヘッジファンドの破たんでだぶついた資金の行き先が失なわれていました。
その資金が一気にIT企業への株式に向かいバブルを後押ししたのです。
当時、大学を卒業したばかりの技術者が創立したベンチャー企業であってもIT企業であれば、プレゼンテーションをするだけで多くの資金が集まったといわれています。
ITバブル崩壊の理由
目に見えたITバブルの崩壊の理由は、パソコンの生産過剰による在庫増で収益が悪化する企業が出始めたこと、およびIT企業というだけで投資資金が集まっていた実力のない企業が競争に負けて脱落、投資家で損をする人が出始めたことです。
そして、これらの現象をきっかけとして業績がそれほどよくない企業でもPER(株価収益率)が100倍をこえていることや、赤字企業でも株価が上がっているのは異常なことだと投資家が心理的に思い始めたことから本格的にバブル崩壊が始まります。
当時、IT技術によって景気拡大は永遠に続くという「ニューエコノミー」の概念がアメリカでもてはやされたことから、過度にIT関連企業に投資が集まっていました。
期待が大きかっただけに思わく通りに進んでいない現象が現れ始めると、投資家が冷静に現状を見るようになり、失望感から株式売却が一気に始まってバブルは崩壊しました。
このITバブルは、2017年の仮想通貨の急騰状況によく似ています。
何かよくわからない仮想通貨(IT)だけれど、次の主たる産業(今の通貨の代替)になる大きな可能性を秘めていると考えられて投資を呼び込んでいます。
仮想通貨の急騰だけを見ると間違いなくバブル状態です。
しかし、仮想通貨の価格が今すぐに崩壊するかは、仮想通貨の有用性がまだ完全に見えていないので不透明です。
仮想通貨の利用価値が今の仮想通貨の価値以上にあると判断されれば、まだ上がり続ける可能性があります。
ただ、急落するリスクもあるだけに今からの投資は自己資金の範囲内にとどめておくなどの注意が必要です。
ITバブル以外の過去のバブル
ITバブル以外にも日本や世界でバブルは起きており、そのなかから代表的な以下の5つのバブルについて概要を紹介します。
なお、バブルには定まった名称がありません。
ここではできるだけ一般的に使用されている名称を用いています。
- 世界最初のバブルといわれる「チューリップバブル」
- 資本主義経済が経験した歴史的な大事件を引き起こした「世界恐慌前のバブル」
- 世界中の経済が混乱した「ブラックマンデー前のバブル」
- 日経平均株価が過去最高値をつけ日本マネーが世界を席巻した「平成バブル」
- まだ記憶に新しく世界金融危機を招いた「リーマン・ショック前のバブル」
日本で過去に起きたバブル
- ウサギバブル(1870年代)
- 戦争特需による大正バブル(1910年代)
- 列島改造論による土地バブル(1970年代)
- 平成バブル(1980年代)
- 1アベノミクスによる金融緩和バブル?(2010年代 現在進行中)
この時期は、昭和の高度経済成長期が続いていました。
日経平均株価も1982年11月の安値6,850円からブラックマンデーの直前まで右肩上がりで26,048円まで上昇、ブラックマンデーで1987年12月には21,037円の安値を付けますが、ここから株価はさらなる急騰を開始し、ついに1990年1月に史上最高値の38,916円まで上昇します。
景気上昇のきっかけは、1985年のプラザ合意による円高容認です。
1ドルが120円台と今までの約半値となって、このときの中曽根内閣が公共事業拡大、金融緩和、税制改革を行った結果、資金は、株・不動産へ流れ込み空前の株高、地価高騰(住宅高騰)が始まります。
投資資金はさらに膨れ上がり、それにつられてゴルフ会員権、絵画、海外の不動産を日本マネーが買いあさるようなバブルが生まれます。
当時、東京都の山手線内側の土地価格がアメリカ全土の土地価格と同じといわれるほど土地価格が高騰しました。
しかし、実体経済からかけ離れた資産価値の上昇を伴っていたため、やがて株や土地などの資産価値が下落します。
これにより、損失を抱える企業や個人が増加し一気にバブルが崩壊しました。
株価は、1990年1月の日経平均最高値から92年9月の安値は14,194円と3分の1近くまで低下し、その後、株価は上昇・下降を繰り返しますが、2003年5月には安値7,604円をつけました。
世界で過去に起きたバブル
- チューリップ球根への投機バブル(1630年代)
- 南海会社株価バブル(1720年代)
- ミシシッピ川流域開発バブル(1720年代)
- 運河バブル(1790年代)
- 鉄道バブル(1840年代)
- 世界恐慌前のバブル(1920年代)
- ブラックマンデー前のバブル(1980年代)
- リーマン・ショック前のサブプライムバブル
1.チューリップ球根への投機バブル(1630年代)
オランダでチューリップの球根が投機の対象となり、球根1個の価値が今の価格に換算すると500万円になるほど急騰しました。
世界最初のバブルといわれています。
富裕層は、絵画やチューリップを庭に植えることを富の象徴としていたため、そこから徐々に珍しい品種や美しい品種を求めるようになり、それに比例して価格が上昇したのです。
その後、球根栽培で富を得る人や、球根の売買で利益を得る人が増え始めたことにより、球根へ投資をする人が増加します。
当初は投資した人の多くが利益を得たことから、富裕層でなく国民全体を巻き込み異常な価格まで急騰しました。
バブルのピークでは価格上昇に上限はないと多くの人が信じるほどでした。
当時のオランダは欧州一の経済力があって購買力があったことや、高価になった球根を信用で購入できる仕組みなどが取り入れられたこともバブルを加速させたようです。
しかし、1637年バブル崩壊が突如訪れます。
今まで売買が簡単に成立していたのが簡単にできなかったことから、一部の人たちが投機から手を引き始めたことがきっかけといわれています。
そして資産を担保にして借金をしていた人の多くが破産しました。
2.南海会社株価バブル(1720年代)~6.世界恐慌前のバブル(1920年代)
この時代のアメリカは、第1次世界大戦を戦っている連合国へ物資の提供や戦費を貸すことで大きな利益をあげ、その後もヨーロッパからの大量の移民による労働力と豊かな国内資源にも支えられ経済発展していました。
そして、イギリスの没落もあってアメリカは、イギリスに代わる世界経済の中心国になるほど栄えます。
好景気に支えられて工業生産力も上昇したことから、大量消費社会が実現し、株式投資が盛んになりました。
しかし、大量消費を上回る生産供給力で在庫が増え企業業績が悪化、それに加えヨーロッパの国々が第1次世界大戦から復興したためアメリカの輸出量は減少、この状況に加え株式投資が加熱していたことから突然株価が暴落しました。
さらに、不安を感じた国民が、銀行から預金を引き出すことで銀行が倒産、その影響で銀行が融資していた企業が倒産、その関連企業も倒産…と「倒産のドミノ倒し」が起きます。
その結果、失業率が25%に達し自己破産者や自殺者が多数出たといわれています。
また、この当時のアメリカは世界経済への影響力が大きくアメリカ発の世界恐慌となりました。
7.ブラックマンデー前のバブル(1980年代)
1987年10月19日にニューヨーク株式市場で史上最大規模の大暴落が発生しました。
この日が月曜日であったことから「ブラックマンデー(暗黒の月曜日)」とよばれています。
この時期のアメリカは財政赤字と貿易赤字の二つの赤字を抱えていたことから、1981年に大統領となったロナルド・レーガンは、「レーガノミクス」を実施。
インフレ抑制のための金融引き締めを実施するとアメリカの金利は20%にも達し、世界中から投機マネーがアメリカに流入し、その結果、1965年頃から900ドル前後で横ばい推移をしてたダウ平均株価が、1982年8月頃から上昇し始めます。
そのまま、ブラックマンデー直前の1987年8月に最高値の2,734ドルまで上昇しましたが、10月に大暴落し、1,994ドルまで低下。
日本では、日経平均株価がブラックマンデーが起きる直前の最高値26,038円から、2カ月後の12月には最安値の21,037円まで下落しました。
このバブル崩壊は明確なきっかけがなかったとされ、理由をあげるとすると以下の3つといわれています。
- レーガノミクスによる金融引き締めで、ドル高になったドルをドル安にするため先進国の間でプラザ合意やルーブル合意が行われたが、ドル高が止まらなかったため
- 先進国の協調政策の足並みが完全にそろわず、株式市場で「G7の協調政策が破たんしたのではないか」という懸念が急速に拡大したため
- コンピューターによる株式売買が行われるようになり、コンピューターが損失を小さくするために自動的に売り注文を出し、これが連鎖したため
8.リーマン・ショック前のサブプライムバブル
リーマン・ショックが起こる前のアメリカは、ITバブルが崩壊し株価は2000年代の初めまで下がり続けていました。
そこでアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は金融緩和を実施。
これによりアメリカを含め世界経済は、物価・金利が低い水準で安定し、経済成長を続けます。
この結果、資産価格の上昇、株価や不動産価格の上昇をもたらしました。
ダウ平均株価は、1998年8月の終値7,539ドルから2003年2月までは乱高下しましたが、この月の終値7,891ドルからリーマン・ショックが起こる前の2007年10月まで上昇し、最高値14,198ドルをつけます。
このころ、経済成長による住宅市場の活況を維持・継続させるために、金融機関は、優良顧客よりも返済能力の劣る低所得者層への貸し出しを拡大する「サブプライム・ローン」と呼ばれる金融商品を開発、金融緩和による資金の運用先として、アメリカだけでなく世界の金融機関が投資対象としました。
こうして住宅市場は盛り上がり、サブプライム・ローンが拡大します。
しかし、伸びていた住宅市場も2006年頃から住宅着工件数が低下し、不動産価格が下がり始めます。
すると同時に金利が上昇、変動金利型のサブプライム・ローン利用者が返済不能に陥り、住宅ローン破産者が増大し、金融機関も回収不能によって経営が悪化し破綻する結果となるのです。
2008年9月にバブルが崩壊すると株価は2009年3月の最安値の6,470ドルまで下落します。
そして、世界各国の金融機関に影響が波及し、世界的な金融危機が発生することとなりました。
日本では、リーマン・ショック前の日経平均株価の最高値は2007年3月の18,300円でしたが、直前の2008年8月には12,671円まで下落、そして、リーマン・ショックが起きた2カ月後の11月には最安値6,994円まで下落しました。
2018年以降にバブルは崩壊する?
現在、アベノミクスによる金融緩和政策を受けて株価は2012年10月の安値8,488円から右肩上がりで上昇中です。
途中、中国の景気失速懸念から世界的に株価が急落しましたが、2018年1月には平成バブル崩壊後の最高値の23,382円にまで上昇しました。
この状況を受けて現在の状況はバブルで崩壊懸念が高まっているとの観測記事が目立つようになっています。
現在の状況はバブルか?
塚崎公義久留米大学教授はバブルが起きて崩壊する条件として以下をあげています。
- 条件1:投資をしたいけれど不安な人に対して心配ないという意見・見方が大勢を占める
- 条件2:景気が好調なのに金融が緩和されている
- 条件3:今まで投資をしてこなかった人が大量に参入してくる
- 条件4:外国など直接投資に関わっていない人と投資家との見解が異なる
条件1の「投資をしたいけれど不安な人に対して心配ないという意見・見方が大勢を占める」というのは、例えば、
- 平成バブル:「日本経済は世界一で21世紀は日本の時代だから、株価や地価が高いのは当然でさらに上がる」
- ITバブル:「ITは夢をかなえる技術、これからの社会に必要な技術だからIT関連株が上昇するのは当然」
- リーマン・ショック前のアメリカの不動産バブル:「米国は移民の流入が多いから不動産需要はいつまでも続く」
などのことです。
また、野村証券で資金運用を担当、後に大学教授で投資家となった山崎和邦氏も似たようなバブルの定義を以下のように述べています。
- 長期的に持続しそうもない高値で資産が取引される
- しかも通常時より大量に取引される
- かつ、誰もが取引に疑問を持たず当然と思っている
- 現在の状況を理路整然と納得できる(異常な状態ではないと)説明をする者が多く出てくる
- 「今はバブルだ」と発言する者は周囲から失笑・嘲笑を受けて発言内容が無視される
現在の状況は、一部が満たされていますが他の条件は完全に満たされているとはいえません。
しかし、アメリカはリーマン・ショック後の2009年3月のダウ平均株価最安値の6,470円から右肩上がりに上昇し、2018年1月には26,616円の高値をつけました。
この状況に対して、シカゴ大学名誉教授ロバート・アリバー氏と、クレディスイス証券の投資ストラテジストのジョナサン・ウィルモット氏の2人は、「時期までは確信できないがアメリカ株式が暴落する条件が整いつつあり崩壊がやってくるのは確かだ」と述べています。
日本はアメリカ経済に強く影響を受けるため、アメリカのバブル崩壊と同時に日本も株安に襲われるのは確実です。
中国経済も不安定要素を強めていることから日本だけでなく世界の動きを注視することが重要です。
仮想通貨は今後どうなる?
まだ、専門家の間でも確実に崩壊すると断言までしている人は多くありません。
主な意見は、経済学者の野口悠紀雄氏の「正直分からない。ただし、価格が下がる可能性が高い」、あるいは麗澤大学教授の中島真志氏の「10万円ほどまで下落してもおかしくない」のようなバブル崩壊の可能性の示唆です。
しかし、一方でIMF(国際通貨基金)専務理事であるラガルド氏は、現在の仮想通貨によって現在の金融機関(金融業務)が破壊されるという見解を持っています。
いったん、便利と認識された手段は簡単になくなりません。
例えば電話が詐欺に利用されているからといって、電話を規制できません。
同様に、送金や決済が今より簡単に速くでき、国ごとに異なる為替差異もなく利用できる仮想通貨を多くの人が利用する時代が来ると、仮想通貨が消滅することはないでしょう。
世界の株価が非常に長い目で見ると値上がりをしていることから、仮想通貨も経済規模の拡大とともに数々のバブル崩壊をしながらも高騰をしていく可能性は否定できません。
ただ、1つ確実にいえることは、バブルに備えて崩壊しても大きな影響を受けない範囲の自己資金で投資をすることです。
まとめ
バブルと崩壊は人間に備わっている金銭欲があるかぎり必ず理性を上回るので発生します。
いつ起こるかを正確に予測することは困難ですが、バブル崩壊に備えることが重要です。
バブルとバブル心理に関する知識があれば損失を抑えることは可能なのです。