住宅ローンという言葉からいろいろな思いが浮かびます。
家族の夢であるマイホームを現実のものとする恩人のような存在でもありますが、日常生活を一変させるような負担を強いる運命を30年以上強いる存在でもあります。
住宅ローンを契約する際には実印を押します。
この実印を押した瞬間にこの2つの思いが交錯します。

家族の団結力がなければ住宅ローンの完済は難しいと言われています。
しかし、家族の夢を軟着陸させるのも住宅ローンなのです。

住宅ローンって何?

住宅ローンとは住宅を担保にしたローン商品です。
銀行だけではなくJAや労働金庫などでも取り扱いをしており、個人顧客獲得が同時にできることもあり金融機関間での競合が一番激しいローン商品です。
住宅を担保にするため、契約に当たっては登記手続が不可欠になります。
土地の登記は必要書類や要作成書類が多いため素人が手を出すことは事実上不可能でしょう。
そのため、ローン契約に当たっては20万円から30万円程度の経費が必要になります。

銀行により経営戦略が違うため一概に言い切れませんが、個人顧客を獲得するために一番いい方法と言われるのが住宅ローンです。
返済口座は必然的に給与振込口座となり、それに合わせて各種引き落とし口座が自動的に変更されます。
そのため、金融機関では最優遇顧客としての対応をすることが多いです。

時間外ATM利用料や他行ATM利用手数料を無料にしたり、振込手数料を一定回数無料にしたりするというサービスを提供しています。
ローン金利は金融機関の個人向けローンでは最低金利となっていることがほとんどです。

金利は市中金利に合わせて半年に一度金利が変わる変動金利と、一定期間金利が固定される固定金利の2種類から選択します。
変動金利を選択後に固定金利へ変更することは可能ですが、固定金利を選択すると他の金利タイプに変更することはできません。
これは固定金利を選択すると金融機関は金利リスクを避けるために保険のような手続をし、その費用が必要なのです。

金利の種類は変動金利と何種類かの固定金利が準備されていますが、一番低いと言われる変動金利や1年の固定金利は1%を下回っているケースがほとんどです。
金融機関の営業収入は利息であるという原則からすると割に合わないと思われがちであり、実際にそのように判断をして法人向け融資を強化している金融機関もあります。
とはいえ、金融機関のイメージアップという観点からすると個人向け融資を捨てることは考えることはできず、低金利レースに踏み留まるとともに、一家の銀行取引を総取りする経営戦略を取っているのです。

いくらまで借りられるの?

住宅ローンは金融機関のローンの中では目的ローンと言われるジャンルに属しています。
そのため、目的の範囲内で融資をすることになります。また、審査がありますから、収入などから算定した要返済額から逆算した融資可能額も融資限度額に影響します。

住宅を担保にするなら、収入などはあまり気にしなくていいのではないかと疑問に思う人も多いようです。
しかし、金融機関の審査は最初から担保権を行使することを前提にして審査をしているわけではありません。
担保権を行使する場合、金融機関は非常に多くの手続を強いられるとともに、借主である顧客からは懇願されたり過度の反発を受けたりします。
そのため、できる限り担保権の行使はしたくないのが現実なのです。

融資限度額に担保価値をどこまで加味するかは銀行によってマチマチです。
外資系の銀行が住宅ローンを貸す場合、担保価値以上の貸付をすることはまずありません。
担保を取るのにどうしてそれ以上の貸付をするのかと考えるのです。
ローン金利は相手の信用と担保で決まるという原則からすればもっともな話です。

しかし、日本の金融機関は担保価値以上の貸付をすることが多いことも事実でしょう。
もともと新築住宅の担保価値は契約書に記載された金額の8割が上限です。
最初から何らかの事情で値引きされた物件もありますが、そのほとんどは売れ残りの建売住宅であり、売却価値が下がっています。
にもかかわらずローン契約の多くは契約書に記載された金額を上限とし、場合によってはオプション扱いで購入したカーテンなどの付属品も融資額に含めていることが少なくありません。

これは、担保付き融資の原則からは外れているものの、他の金融機関との競合や提携している住宅会社との関係上、契約者の収入から返済できる範囲内だと判断されれば審査の稟議を通してしまうためです。
もっとも、無制限に貸付をするわけではなく、おおよその目安として住宅の契約書に記載された金額が上限だと考えれば間違いありません。

固定金利と変動金利どちらがお得?

先ほど述べた通り住宅ローンの金利は固定金利と変動金利の2種類があります。
どちらがいいかを安易に決めることはできません。
両者ともに長所も短所もあるためです。

まず固定金利の長所として、一定期間何が起きようと金利が変わらず、毎月の返済額が一定である点が挙げられます。
最近はあまり聞きませんが、一時期日本国際の発行金額が問題になり将来ハイパーインフレになるのではないかという記事や論調が増えました。
このような場合でも固定金利であれば金利は変動しないため安心感があると言われます。

しかし、固定金利を適用すると金利は高めになります。
これは長期間金利を固定することによるリスクを回避するため、金融機関が金利スワップという保険のような商品を購入することが原因です。

変動金利の長所と短所は固定金利とまったく逆です。
長所は金利が低いことであり、短所は金利リスクをストレートに受けることにあります。
どちらがいいかは借りる人の判断です。

ただし、住宅の広告に出ている「提携金融機関のローン金利」という理由だけで変動金利を選択するのはちょっと危険です。
変動金利を選択するのであれば、それで構わないのですが金利リスクがいかなるものかは知っておく必要があります。

毎月のローン返済額は最初に決めた返済期間と金利から算定します。
金利が上がると要返済額が大きくなるため返済額は増加し、下がれば減ります。

現在は日銀がゼロ金利政策を実行し、日本国債を「爆買い」しているため市中に国債が出回っていないという異常事態になっています。
固定金利の金利指標である10年物国債の金利がマイナス圏に突入していることから金利をまともに決められないのです。

しかし、先ほど述べた通り日本の国債発行残高は異常数値です。
米国に比べれば経済規模が小さい日本が、米国と同じ規模の国債買い入れをしていると言えば異常さがわかるでしょう。
現在日銀が買いつづけている国債はいつか市中に売却されます。
住宅ローンの借入期間は10年単位で最高35年です。
その間変動金利のままで問題なく借り続けることができる保証などどこにもないのです。

ハイパーインフレになると金利は急騰します。
物価の急騰も同時に起こり給与水準も上がりますが、一時的でも返済不能なまでに毎月の返済額が上がるのです。
固定金利であれば給与水準がインフレとともに上がることにより、家計に余裕ができるでしょう。

しかし、変動金利の場合は地獄絵を見ることになりかねません。
可能性としては非常に低いですし、時間の経過とともに返済が進んで借入元本も減少します。
被害は思ったほど大きくないかもしれません。

一概に低金利だから変動金利の方がいいとは言い切れないことは知っておいたほうがいいでしょう。
住宅ローンの返済は非常に長期間にわたるのです。

住宅ローンの審査

住宅ローンの審査は一般的な銀行の審査とは一線を画していると言われています。
先ほど述べた通り外資系銀行の審査は、担保価値を上限としてそれ以上の貸付はしません。
もし資金的に必要ならば別のローン契約で対応するというのが基本スタンスです。
これが本来のローン審査です。

しかし、実際にはそのようなことにはなっていません。
特に住宅会社などとの提携ローンはエステなどの提携ショッピングローンと同じで、ローンが通らないと契約ができないため、何とか審査を通してもらいたいとお願いすることが少なくないのです。
提携ローンを提供している金融機関は、その住宅会社に資金融資をしていることが多く、融資資金回収のために早く売ってほしいのが本音です。
結果として審査は通りやすく、ちょっと危ないかなと思われる顧客がローンの審査に通ってしまうのです。

もっとも、金融機関側も自己防衛策は取ります。
融資条件として給与振込口座や家族の預金をすべて融資銀行に変更することを暗に要求します。
いざとなったらすべて差し押さえて回収できる限り回収しようとしているのです。

このような事情がなくても、日本の銀行は担保価値を超えたレベルまでローン貸付をします。
この際の審査基準は担保価値ではなく、収入と家族状況から逆算した返済可能性です。
つまり、無担保ローンと似たような審査になってしまっているのです。

担保権行使を最終手段と考えているのであれば、これで問題ないのかもしれません。
契約者としても担保価値以上に有利な借り入れをすることができるため悪い話ではないでしょう。
このような審査が通っている原因は冒頭に述べた、金融機関間の競争なのです。

まとめ

住宅ローンを借りる決断は人生の中で一度だけという人も多いでしょう。
そのような機会なので、事前に家族で今後の生活を話し合うことを強くお勧めします。

ローンが開始されるとお父さんのお小遣いは減ります。
お母さんは家計のやりくりに大変なプレッシャーがかかります。
今までお金が足りなくてもボーナスがあるからとアテにしていたボーナスが使えなくなるのです。
子供たちも、今まで旅行に行っていたのに行けなくなったりする不満が生じます。

住宅ローンの契約前に家族での話し合いが不徹底だったためにローンを残したまま離婚に至った家庭もあります。
離婚に至らなくても自宅を売却して完済した事例もあります。
お金が自由にならなくなると家庭内で不満が溜まるのです。

このようなことにならないように事前に話し合いが必要なのです。
お父さんやお母さんは、ローン返済が開始されると、どのようなことになるかを家族に説明してあげることが大切です。
それでも家族の夢としてマイホームがあるなら、家族の夢をかなえる手段として住宅ローンを契約すればいいのです。
そこまで話し合って決めたローンなら完済できることは間違いないでしょう。

住宅ローンは家族の夢を完済に向かって軟着陸させる手段なのです。