
レンタル店でCD・ビデオを借りたとします。
「返却予定は1週間後○月○日です」などの説明を受けて借りますよね。
ところがもし返却予定日を1週間過ぎても返却せず、それから数日過ぎて返却した場合、どのようなことになるでしょうか?
「○日返却日を過ぎているので、追加料金として○円お支払いをお願いします」と言われ、余分なお金を払わねばならなくなるでしょう。
返却予定日を超えてしまうと、経過日数分に相当するペナルティ代を支払わねばなりません。
カードローンやクレジットカードの返済が遅れた場合、このペナルティに相当するものが遅延損害金と呼ばれているものです。
ここでは、延滞損害金の、
- 意味
- 計算方法
- 金融業者の対応
- 遅延利率
- 利用者が取るべき対策
について詳しく解説します。
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遅延損害金について
遅延損害金とは
遅延損害金とは、カードローンやクレジットカードを契約している個人・法人などが、発行会社と約束した支払期限を超えて返済をしなかった場合、通常の利息に加えて支払わねばならない違約金(ペナルティ)のことです。
通常、遅延損害金は利息と共に徴収されるので、利息の一部としてとらえることもできますが、あくまで本質はペナルティ、あるいは約束を破ったことに対する賠償金と考えた方がよいでしょう。
遅延と滞納の違い
遅延損害金を述べる前に、ここでは遅延と滞納の違いについて明確に定義づけしておきましょう。
また遅延とは別名、延滞とも呼ばれていますが、ここでは統一して遅延と呼ぶことにします。
- 滞納…返済が滞った状態が継続して、61日以上もしくは3ケ月以上経過した場合
- 遅延…返済が上記以外の状態全般
したがって、この定義によれば、返済が当初に取り決めた返済日を1日でも遅れたら遅延ということになります。
返済が一日でも遅れたら遅延?
しかし一般的には、カードローンやクレジットカードの返済で、約束した返済日を超えて返済が遅れた場合、すぐに遅延として扱われるかと言えばそうではありません。
たとえば返済方法として、取引銀行の個人預金口座から返済金を指定日に引き落とす口座振替がありますが、しばらく口座残高をチェックしていなかったために、引落日に残高不足で返済代金が引き落としできなかった例があります。
このような場合、本人が意図的に、あるいは悪意をもって返済を遅らせたわけでなくあくまでうっかりミスなので、金融業者から入金を督促されて後日無事に口座振替できれば、金融業者としても遅延とは取り扱いません。
ただしこれにも限度があり、遅延が何度も常習化してくると、金融業者にもよりますが悪質と判断してカードローンを使えないようにされるとか、クレジットカードもいきなり解約されることもあります。
ブラックリストと遅延
返済が滞り「滞納」状態になった利用者の個人情報を、その金融業者が加盟している信用情報機関に提供した場合、その情報のことをブラックリストと呼んでいます。
ただしブラックリストは通称で、正式名は「異動情報」です。
一旦ブラックリスト入りすると、その情報は金融業者間で相互利用されるので、本人が他のローンやクレジットカード等を利用しようと申し込みしても、まず審査に通りません。
またこの情報は最長5年間(信用情報機関によっては10年)、その信用情報機関で保存されますので、長期間本人が不利益を受けてしまいます。
ただ「遅延」だけですぐにブラックリスト入りするかというとそうではなく、あくまで「滞納」になり、金融業者から信用情報機関に通知されると登録されるので、遅延だけですぐにブラックリスト入りするというものではありません。
しかし遅延は遅延であり、約定日に返済しなかったという事実は、その金融業者内では長期間、重要な与信判断の情報として保存されます。
それをどう扱うかは各金融業者の個別判断にもよりますが、複数回遅延を起こしていれば、次に各種ローンやクレジットカードを利用する時に、あまり良い結果にはならないものと考えて下さい。
遅延している状態が1ケ月程度でも、金融業者によっては滞納扱いにして信用情報機関に通知する場合もありますので、遅延を簡単に考えない方がよいでしょう。
遅延損害金の計算方法
遅延損害金を計算する場合、カードローン・キャッシングとクレジットカードのショッピングでは計算式がやや異なります。
またキャッシングには、銀行や消費者金融が発行するカードローン以外に、クレジット会社、信販会社等が発行するクレジットカードのショッピング機能に付いているキャッシング枠もあります。
キャッシングの遅延損害金の計算方法
計算式は以下の通りです。
◆借入残高×遅延損害金利率÷365日×遅延日数
ショッピングの遅延損害金の計算方法
ショッピングのケースとは、クレジットカード代金の決済を遅延させたケースですが、計算式は以下の通りです。
◆請求金元金×遅延損害金利率÷365日×遅延日数
キャッシングとショッピングの遅延損害金の根拠法は異なっている
キャッシングに関する遅延損害金、ショッピングに関する遅延損害金は、それぞれ根拠となる法律があります。
- キャッシング⇒利息制限法
- ショッピング⇒消費者契約法
またキャッシングの場合、利息制限法で融資額に対する上限金利が決まっており、それぞれの1.46倍まで遅延損害金をつけることが許されています。
計算の結果、遅延損害金利率は以下の通りです。
- 融資額10万円以内…上限金利年20.0%→遅延損害金利率20.0%×1.46=29.2%
- 融資額10万円以上100万円以内…上限金利年18.0%→遅延損害金利率18.0%×1.46=26.28%
- 融資額100万円以上…上限金利年15.0%→遅延損害金利率15.0%×1.46=21.92%
ただし実務面では、営業に関する遅延損害金の利率は最高で年20.0%と法律で規制されており、銀行、消費者金融業者がつける遅延損害金の利率は、最高でも年20.0%で運用されています。
一方ショッピングの場合、クレジットカードのショッピング枠が対象ですが、こちらは消費者契約法に基づき、国内のほとんどの会社が遅延損害金の利率に年14.6%を採用しています。
それでは次に、上記の遅延損害金の情報に基づき、実際の金融業者では遅延損害金について、どのような利率を付け、また遅延や滞納を発生させた利用者にどのように対応しているか、具体的にみていきましょう。
銀行・消費者金融等の遅延損害金
まずはキャッシング部門のうち、カードローンを発行している銀行および消費者金融のケースです。
主要銀行の遅延損害金利率
銀行カードローン名 | 遅延損害金利率(年率) |
---|---|
三菱東京UFJ銀行・バンクイック | 1.8%~14.6%(※1) |
三井住友銀行カードローン | 19.94% |
新生銀行カードローン・レイク | 19.90% |
オリックス銀行カードローン | 残高×(借入利率+2.1%)(※2) |
楽天銀行スーパーローン | 19.90% |
イオン銀行カードローンBIG | 19.80% |
ゆうちょ銀行(※3) | 19.50% |
※1借入時のカードローン金利がそのまま遅延損害金利率として適用される
※2利用限度額に応じて借入利率1.7%~17.8%が適用
※3ゆうちょ銀行は銀行代理店として、スルガ銀行のカードローン「したく」を販売
※借入金額が10万円と仮定すると、三菱東京UFJ銀行カードローン・バンクイックでは、遅延損害金利率は14.6%、オリックス銀行カードローンの利率は19.9%(両行とも、上限金利を適用した場合)
主要消費者金融の遅延損害金利率
消費者金融業者名 | 遅延損害金利率(年率) |
---|---|
アコム | 20.00% |
SMBCコンシューマーファイナンス・プロミス | 20.00% |
SMBCモビット | 20.00% |
アイフル | 20.00% |
銀行・消費者金融等、カードローン・キャッシングの遅延損害金に対する対応
1980年代から1990年代にかけて消費者金融業者や闇金業者が行った、遅延・滞納者に対する度を過ぎた厳しい取り立て行為は目に余るものがあり、その結果家族離散や自殺者まで出したことから、社会から強い批判を浴びました。
それらの反省点から法律が改正され、現在は利用者の返済が遅れて業者が督促をするにしても、かつてのように深夜まで電話を掛けるとか、暴力的にふるまうなどの行為は厳しく取り締まられるようになっています。
そのため、以前に比べて現在は、遅延・滞納者に対する金融業者の対応は穏やかで紳士的です。
合法的な業者に限っては、声を荒げるとか、恫喝するようなことは決してありません。
利用者の遅延が始まると、業者は、最初は督促のためのハガキを送るか、本人への電話にとどめ、早めに遅延が解消されればそれで終了です。
ただし、督促してもなかなか遅延が解消されず、滞納の段階に入ると、業者としてもカードローンを利用できないようにする一方で、融資元金に加えて利息・遅延損害金を含んだ金額の一括請求書を本人に送り支払いを促します。
しかし一括請求しても本人が返済に応じない場合、いよいよ最終段階として、業者は裁判所に訴え、本人の財産に対する差し押さえの準備です。
それでもし裁判所に訴えが認められれば、金融業者としては、本人の給与や各種不動産等に差し押さえを掛けて債権の回収を行います。
これらが一連の銀行や消費者金融の遅延滞納先に対する対応です。
クレジットカード会社の遅延損害金利率
続けてクレジットカードを発行している金融業者の遅延損害金利率のケースです。
ショッピング機能とキャッシング機能とで、異なる遅延損害金利率が適用されます。
クレジットカード会社の遅延損害金利率
クレジットカード名 | 種類別 | 遅延損害金利率(年率) |
---|---|---|
JCBカード | ショッピング | 14.60% |
キャッシング | 20.00% | |
三井住友VISAカード | ショッピング | 14.60% |
キャッシング | 20.00% | |
三菱UFJニコスカード | ショッピング | 14.60% |
キャッシング | 20.00% | |
セディナカード | ショッピング | 14.60% |
キャッシング | 20.00% | |
オリコカード | ショッピング | 14.60% |
キャッシング | 18.00% | |
楽天カード | ショッピング | 14.60% |
キャッシング | 19.90% | |
アメックスカード | ショッピング | 14.60% |
キャッシング | 20.00% |
クレジットカード会社の遅延損害金に対する対応
クレジットカードを利用して商品の購入やサービスの提供を受けた場合、通常カード会社が利用代金を先払いしてくれます。
ところがカード会社の指定した口座振替日に、利用者が必要な資金を口座に用意せず、引き落とし不能で決済ができなかった場合、利用者本人にそのような意図がなかったにしても、カード会社からすればそれは窃盗・詐欺と同じ行為です。
一日も早く、信用回復のためその遅延状態を解消せねばなりません。
幸い日本のカード会社は、仮に指定日に残高不足で口座振替ができなくても、その日から15日~20日以内に再度口座振替をしてくれるケースが多く、次回でスムーズに決済が行われれば遅延扱いにされることもありません。
しかしアメックスのような外資系カード会社の場合、国内カード会社のようなウェット対応もしてくれず、1~2回支払い遅延をしただけでカードを強制解約されてしまうケースもあります。
遅延状態が続いていよいよ滞納の段階になると、クレジットカード会社としても、銀行・消費者金融カードローンと同様、信用情報機関にその滞納情報を送る一方で、各種方法による督促の頻度を高めてきます。
もちろん遅延した段階ですでにクレジットカードも利用できなくなっていますし、滞納の事実が信用情報機関を通じて広く業界に周知されているので、もし本人が他のクレジットカードを持って利用していたとしても、そのカードも早晩使用停止になるでしょう。
最期には、利用金額が金利・遅延損害金とともに一括請求されて、さらに放置すれば法的整理に進むのは、すでにカードローンで述べたプロセスと同じです。
またクレジットカードのショッピング機能に付いていたキャッシング枠を使って利用した残高があれば、それもショッピングの債務と併せて請求されることになります。
遅延に対しどのように対応すべきか?
キャッシングの返済遅延の場合、何より返済遅延が起こりそうであれば、事前にできるだけ早めに金融業者の担当者に電話して対策を相談すべきでしょう。
前もって相談すれば、相手も可能な範囲で対応してくれます。
たとえば、金利だけ先に支払って後で元金を払うとか、返済期間を延ばすことで返済金額を引き下げる、などの対応も可能です。
もし遅延してしまった場合でも、早めに連絡を入れれば金融業者も、督促ハガキや電話の対応をせず、利用者が入金できるまでしばらく待機してくれるかもしれません。
しかしショッピングの返済遅延の場合は、キャッシングの遅延以上にもう少し深刻に捉えるべきです。
クレジットカードは、重要な決済手段のひとつとして、今や我々の日常生活に欠かせないものになっています。
あらゆる生活の中に決済手段として組み入れられているので、もしそれが返済遅延を原因として、一切利用できなくなったとしたら、それを想像するだけで息苦しく感じませんか?
それだけに返済遅延は絶対避けるべきです。
遅延の可能性があるなら、一日も早くカード会社に連絡を入れて対策を相談しなければなりません。
またもし遅延が起こりそうなら、返済方法を一括払いから分割払い・リボルビング払い等の毎月返済に切り替えることで、返済負担が少なくなり、その難局を乗り越える方法もあります。
ただしその手続きは、遅くても約定返済日の前には終了しておくことが必要です。
とにかくクレジットカードの返済遅延は、使用中のクレジットカードのみならず、すでに発行済みの他社のカードローンやクレジットカードにも大きなマイナスの影響を及ぼすので、起こさないようにすることが肝心です。
信用情報機関の種類と機能
返済遅延に関し、信用情報機関はとても重要な役割を担っています。
現在日本には3つの指定信用情報機関があり、それは以下の3つです。
- 全国銀行個人信用情報センター…会員は銀行、銀行系カード会社、保証機関など
- JICC(日本信用情報機構)…会員は消費者金融、信販会社など
- CIC…会員はクレジットカード会社、信販会社など
それぞれの信用情報機関の間では、FINE、CRINと呼ばれる登録情報相互交流システムを動かしており、この中で滞納に関する情報も活用されています。
信用情報に登録されるデメリット
これらの信用情報機関では、滞納に関する個人情報以外に、申込・契約ほか信用にかかわる色々な情報も蓄積されていて、毎日会員間で相互利用されていますが、特に加盟会員に取って重要な情報は、「異動情報」と呼ばれるものです。
異動情報には利用者の滞納情報ほか、任意整理や個人再生、自己破産などの債務整理に関する情報も含まれており、会員が与信判断を行う時、これらの情報が登録されていれば、まずその案件を許可することはありません。
とにかく、いったんこの種の異動情報が信用情報機関に登録されてしまうと、最長で5年から10年、各信用情報機関に保存されるので、登録された本人が、長期間、各種ローン、クレジットカード等を利用できなくなるデメリットが生まれます。
個人も自分の登録情報が請求できる
人によっては、自分が過去の支払いで遅延や滞納を起こしたかどうかさえ、はっきり覚えていない人もいるでしょう。
しかしそのような人でもいつか、ローンやクレジットカードを利用しようと思う日がくるかもしれません。
そうなると心配なのは、自分が過去の返済でなにかトラブルを起こしていなかったかどうかです。
幸いにも、これらの信用情報機関では、本人が直接請求することで、自分に関する個人情報を手にすることができます。
自分の登録状況が心配な人は、ローン等申込前に必ず個人情報を請求して、事前に登録内容を確認してみて下さい。
各機関それぞれ500円~1,000円の手数料が必要ですが、ネットで申し込みをすることも可能です。
◆参考記事:修行不足で審査に落ちる!クレジットヒストリーとは?
まとめ
自己都合や怠慢で返済を遅らせるとか滞納すると、信用を失うだけでなく、カードを作れなくなったり、分割払いを使えなくなる可能性も出てきます。
便利なシステムを使うには、毎回きちんと期日内に返済することが大切です。