一般的に、不渡りを起こすと倒産すると言われています。
社会人にもなれば日常会話の中で「不渡り」という言葉を聞くことがあるでしょう。
自分だけ知らないということがないように、一般常識として勉強していきましょう。
今回は、不渡りについて基礎知識から丁寧に解説していきます。
この記事に書いてあること
不渡りってどういうこと?
まず、不渡りという言葉の意味をご存知でしょうか?
不渡り(ふわたり)とは、手形や小切手の支払期日を過ぎても債務者から債権者へ額面金額が引き渡されず決済できないこと。
ビジネス経験がなければ少し意味が分かりづらいかもしれませんが、わかりやすくいうと、「お金を払う約束をしていた日までに払えなかった」ということです。
このような状態のことを、一般社会では不渡りと呼んでいます。
手形とは?
手形は、ある一定の期間後にお金を支払うことを約束するものです。
そのため、今すぐお金が手元になくても、発行することができるのです!
手形には、
- 約束手形
- 為替手形
の2種類ありますが、通常「手形」といえば約束手形のことを言います。
国内の取引で、為替手形はあまり使われていません。
約束手形とは?
まず、銀行が交付する約束手形用紙に記入します。
- 金額
- 振出日
- 支払期日
- 受取人
- 住所・氏名
- 銀行届出印
- 印紙(10万円以上の場合)
借用書みたいですね。
取引先への支払い時などに、後日入る売上金から支払うときなどに使います。
④の受取人のところを空欄にしておくこともあります。
そうすると、A社からの手形をB社への支払いに使う(又貸し的な?)ことも可能です。
※裏書譲渡と言います。
手形を切ったにも関わらず、③の支払期日までにお金を用意できなければ「不渡り」です。
つまり、「◯日までに払います」と言っていたのに払えなかった。ということですね。
その場合は、受取人に連絡をとって支払期日を伸ばしてもらうことも可能です。
ただし、どちらにしても「信用」があってのものとなります。
手形の割引
今すぐお金が必要なのに、手元にはA社から受け取った手形しかない!
というときは、金融機関等で手形の割引をしてもらう「手形割引」という方法があります。
金利などを割引料として引かれるので、手形に記載されている全額が手元に入るわけではありません。
自分の会社だけでなく、A社の信用がないと割引してもらえない可能性もあります。
しかも、もしもA社が不渡りを出した場合(期限までに払えなかった場合)、その請求はあなたのところへきます。
間違えないで!手形貸付
手形割引でも自己手形割引(通称:手形貸付)は、自分で手形を発行して、その手形を金融機関等で割り引いてもらう方法です。
簡単にいうと、「後で10万返すから9万円貸して!」というようなものです。
一般的に「手形割引」というと、他社の手形を割り引くこと「商業手形割引」のことを指します。
「自己手形割引」は、手形貸付と呼ぶことがほとんどです。
不渡りをするとどうなる?
まず、不渡りを1度行ったからといって、すぐに倒産するわけではありません。
しかしながら、不渡りを1度行うと、全銀行にその事実が知られてしまい、借り入れや今後のビジネス展開などが、非常に厳しくなってしまいます。
そして、不渡りを6ヶ月以内にもう1度行うと、銀行取引停止処分というものが実施されます。
普通口座は使えるものの、手形の振り出しができなくなってしまいます。
ここまでくると、ビジネスが完全にストップしてしまい、時間の経過とともに倒産してしまうことがほとんどでしょう。
取引先の会社が倒産した場合の対処法
取引先の企業が倒産してしまった時点で、どのようなことを自社で行っていく必要があるのでしょうか。
まずやるべきこととして、債権リストを作成してください。
債権リストには、債権の種類や具体的な金額、契約書類、担保の有無などを明確に記載していきます。
債権リストを作成し、満足していてはいけません。
1日でも早く、倒産先の企業に連絡を行いましょう。
実際に、取引先の企業が倒産した場合は、下記手順に従って対処していくことが大切です。
- サービスの提供をストップする
- 提供した商品やサービスを回収する
- 損害が出ているのであれば、取引先の企業に存在するものによって代物弁済を実施する
もし、担保権が存在するというのであれば、権利を実行する。担保権を実行するためには、取引先の企業に通知する必要があるため、連絡と確認だけはきっちりと行う必要がある。
上記の内容を、経営の実権を握るものが、手順通り正しく行う必要があるのですが、相手も資金が不足しているということで、交渉に応じないことがあるのです。
その場合、法的手段を利用し、保全措置を行ったり、強制執行を行ったりする必要があります。
これらの手続きに関しては、法的無知の状態で行えるものではありませんので、弁護士に仕事を依頼し、正しく対処をしてもらいましょう。
手形と小切手との違いは支払いまでの期間
不渡りの勉強をしていると、手形と同様に小切手という言葉も見かけます。
小切手も手形と同じように、お金の代わりとして利用できるのですが、なぜ名前を違うのでしょうか?
手形と小切手には、明確な違いが存在します。
手形と小切手の共通点は、日付や金額や必要事項を用紙に記入し、取引先に渡し指定した金額を支払う約束をする。ということです。
取引先に手形を切った場合は、一定期間の猶予があるのでいますぐお金を用意する必要はありません。
一方の小切手を切った場合は、相手が受取ったその足で金融機関等へ持ち込むことが可能なのです。
つまり、小切手の口座「当座預金」にお金がないと小切手を発行できません。
厳密には、小切手を発行することはできますが、当座にお金が足りていないと不渡りとなってしまいます。
※「先日付小切手」という手形のように発行するものもあります
銀行口座の内容に影響を受ける
小切手が取引先の手に渡った時には、小切手に記入された金額以上のお金が当座預金口座に入っている必要があります。
しかしながら、手形であれば、銀行口座に500円しか入っていなくても、1,000円の手形を作成することができます。
上記でも説明したように、支払い猶予が与えられているからこそ、このようなことが可能となっています。
自社が不渡りの手形を出すと倒産する?
もし、自社が2回の不渡りを行い、経営が非常に厳しい状態であるというのであれば、倒産する確率は非常に高いと言えます。
確実に何日か後に入ってくる現金がある。というのであれば、100%倒産するとは言えませんが、資金繰りがうまくいかなくなっている時点で、会社の経営がうまくいっているとは言い難く、近いうちに倒産する可能性が高いでしょう。
まとめ
不渡りとは、当初支払えると思っていた手形が資金不足によって、支払うことができない状態であることを意味する言葉だと説明しました。
もし、1度目の不渡りから6ヶ月以内にもう1度行うと、銀行取引停止処分を受けてしまいます。
これによって、手形や小切手取引が完全に実施できなくなってしまいます。
1回目の不渡りの時点では、銀行取引停止処分を受けないものの、不渡りしてしまった事実がすべての金融機関に共有されるようになっていますので、今後融資を受けるということは不可能になることを、しっかりと覚えておきましょう。
また、自社が不渡りになったことを想定して行動することも大切ですが、取引先が不渡りになることを想定しておくことも大切です。
必要であれば法律事務所の弁護士を雇い、法的処置などを実施し問題を最小限に抑えていくことが求められます。